湾曲した壁は家族を包む波、
居住空間は自由度満点の孤島。
haus-wave
2017年某日、大阪市港区 haus-wave の建主F様にインタビューに伺いました。
一級建築士事務所hausに依頼される前から完成までを振り返っていただき、 当時の思いや状況を赤裸々に語っていただきました。
一級建築士事務所hausのパンフレットにも掲載している内容の一部をご紹介。
(左)一級建築士事務所haus 山根徹也
(中央から右)建主 F様ご一家
路地裏にそびえる湾曲した真っ白な壁は家族を包む波。
そして波間に浮かぶ居住空間は自由度満点の孤島のように穏やかで心地良く・・・
___ここはもともと、ご主人のご実家だったんですよね。そこを建て直すにあたりいくつか不安があったそうですが。
F様ご主人(以下F様)
道路が狭く家が密集していて、日当たりが悪く、敷地面積も限られているので、プライバシーを守るのも難しくて。子育て世代として、それらの問題が解決できなければ親から譲り受けることを断念しようと思っていました。
___それらの悩みを建築家なら解決してくれると思われたのでしょうか。
F様
まずここを出た両親が大手ハウスメーカーに頼んで家を建てたのですが、結構値段が高く、その割には縛りが多くて自由度がない・・・。しかも建てたら終わり、という感じでアフターフォローが行き届いておらず、夫婦揃ってメーカーに不信感を抱いてしまいました。だから劣悪な環境でも斬新なアイディアとセンスで解決してくれるような建築家を探すことにしました。
hausとの出会い
___hausはどうやって見つけましたか。
F様
まず妻が関西の建築家で検索してhausのウェブサイトにたどり着き、気に入ったんです。僕もこれまでの山根さんの事例を見て、他に比べてダントツに良いと思いました。実はその時、すでに他の大阪市内の建築家に話をしていたんです。そちらもなかなか良いデザインでしたが、生活動線が上がったり下がったり、住みにくそうと思ったことも山根さんに傾いた理由のひとつ。しかも僕と同じくギターを弾き、音楽の趣味も合いそうだと直感。大きな期待を抱きつつ連絡を入れました。
___日当たりやプライバシーなどの問題を、解決できると思ったのはいつですか。
山根
事務所にご夫婦が来られた次の週に現地調査をしました。既存のご実家を見せてもらい、日当たりの悪さは体感したものの、向かいの家の外壁に当たる日差しを見て、その場で解決策が浮かびました。外壁の内側にライトコートとなるバルコニーを作り、南側からの差し込む光を室内に反射させる。湾曲の壁は目隠しにもなり、となり近所や近くにそびえる高層マンションからの視線も遮ってくれるな、と。
F様
そのアイディアには衝撃を受けました。しかも筆記用具を筆巻きみたいな革製のペンケースから出してきたことが印象的で・・・。この人のセンスを見せてもらおうと、プレゼンを依頼しました。それまでの間に開催されていた完成見学会にも参加していたので、渡された要望書に書くのは予算と希望の部屋数ぐらいに留め、ある程度はお任せしました。
プランニングについて
___そして提案された初回プレゼン案は、どうでしたか。
F様
現地調査から2週間で提案されたのですが、壁の反射を使うと言っていたアイディアが、建物正面のかっこいい外壁で描かれていて、なるほど、と納得。しかも”波除”という住所と”wave"がシンクロしているあたりの遊び心も気に入り、設計契約をすることにしました。ただ素人なので、なかなか平面から立体を想像できなくて。山根さんが造ってくれた模型やCGがありがたかったです。
山根
プレゼン案から大きく変更したことと言えば、階段の位置ですね。生活動線としての利便性とデザインを重視すると、1階から3階まで一気に通すのがベターですが、『娘たちが思春期にある時期でも、家に帰った時や出て行く時に必ず家族を顔を合わせ、言葉を交わすことができるつくりにしたい』という奥様の要望で、2階で切り替えて左右振り分ける今の形になりました。
F様
そうそう、3階にある子ども部屋へは2階リビングを横断することとなり、リビングの階段をインテリアの一部としてデザインしてくれて、より好みのリビングへと改良してくれました。
F様奥様
主人の両親がメーカーで建てた時には、自由度が低いから、柔軟な大幅変更なんてありえなかったので、本当に山根さんで良かったです。
___細かい変更や希望をあとから出されたりしましたか。
F様
当初作るつもりだった和室をやめたり、収納を増やしたり・・・。予算を下げるために、洗面台は自分で探して来たものを取り付けてもらったりもしました。それでも全体のデザインを崩さず、まとめ上げてくれました。
F様奥様
とにかく収納をあちこちに用意してくださったのには助かっています。階段の下も収納ですし、ライトコートの下には広い納戸が。布団や季節の家電をしまうだけでなく、急な来客時、リビングに散らかっているものを隠すこともできます。キッチンにある、多数引き出しを備えたバックキャビネットも重宝しています。
最後に・・・
___他にもオーナーさんと建築家の二人三脚で自慢できるところは。
山根
工事の終盤で玄関ホールの横長の壁ニッチ(飾り棚)に何を飾ろう?となった時、私とFさんの意見が一致したのが、Fさん所有のオールドギター。でもギターを掛けるのにちょうどいい横掛けのフックが市販にはなくて・・・。
F様
じゃあ作りましょう、となったんです。私の仕事が金物作製なので。ヒントを得るために、ふたりでホームセンターに行って、いろいろ金物を物色したのも、いい思い出です。
___Fさん家族にとって、hausとはどんな存在ですか。
F様
末永く、なにかあれば頼りにできる存在ですね。最近では、ボルダリングの壁を家のどこかに作れないか、など、思いつきを相談したり。娘たちが大きくなったら、子ども部屋の間取り変更などの相談もするだろうし。プロだけど、素人の我々の意見も親身になって検討してくれるところが、嬉しいですね。そして僕らはすっかり山根作品のファンです。もう家が完成したというのに、完成見学会があれば、できる限り参加しています。そして、そのたびに、どの作品も良い!でも『我が家が一番!』と思える・・・そこがさすが、です!
取材チームが感じたこと
___音楽をはじめ、山根のセンスに共感を覚えたFさんは、ほぼお任せというスタイルでオーダー。初めて会ってから工事完成まで1年2ヶ月。その間に、すっかりFさんファミリーのライフスタイルを把握し、その生活に合った提案を随所で出来たことが、満足度に繋がったのでしょう。音楽が好きなだけに、山根の作品集をミュージシャンのアルバムにたとえて、『全曲、捨て曲がない』とおっしゃったFさんの言葉が印象的でした。